新卒広告サラリーマンのつぶやき

経済的な自由を求めて

芸人養成所に通っていた話

3年ほど前にいわゆるお笑い芸人の養成所に通っていました。

 

大学に通いながらのWスクールの形ですが、週1回19時からでありましたので、サークル感覚でほとんど負担にもならなかったです。

 

入る前は養成所なんてハードルが高く、どんな場所か全く想像もできなかったのですが、いたって普通の環境でした。

私は中学生ぐらいの頃から生き方について考えており、お笑い芸人という職業に強い関心がありました。

いつかは必ずお笑い芸人になろう、そのために東京に行こうと考えていたものの、なかなか行動力がなく、気がつけば22歳となっていました。

 

22歳は社会的には若者ですが、芸人としてのキャリアを歩み始めるには決して早い方ではありません。

年齢的にはギリギリであり、高い入学金や授業料もあって、かなり大きな決断の末に入学を決めました

 

そもそも大学に入学したのも浪人という名のニート生活を送っていたので20歳と遅く、ふらふらと人生をただ消費していたので、大学も中退しようと考えていました。

大学に入ったのも東京にいって、芸人になるための口実に過ぎなかったと思います。

 

入学すると同じように芸人を目指している同期が多くいました。

元ミュージシャンやアマチュアとしてすでに芸歴を重ねている者もいましたし、高校卒業したての若者やフリーターも大勢いました。

自分と同じような大学生や大学卒業したての人も多かったです。

30過ぎのおじさんや還暦間近のおばさんもいました。

様々な境遇、バックグラウンドを持った人々がいる中で、必ずしも本気で芸人になろうとしていない者も相当数いたと思います。

 

事実、初回の講義日には60人ほどいたのに、次回の講義には50人、1ヶ月もたつと40人ほどになっておりました。

学費は相当高額のはずなのに、です。

また、養成所と言っても講義で何かを教わるというよりは、自分でネタを書いてネタ見せするのが中心であり、養成所以外の時間の使い方がいかに重要であるか問われます。しかし、人生をかけて芸人を目指している者が集まるわりにはネタ自体あまり練られておらず、素人丸出しのクオリティが多かったです。これは自分も含めてです。

 

結局のところ、テレビに映る芸人のイメージそのままで、芸人なんて遊んでふざけているだけみたいな軽い気持ちで取り組んでいる人が多いと感じました。

実際、すべての時間を自分の身を削るぐらいの心意気でネタや稽古に捧げれば、売れる売れないは別として、人前に出て恥ずかしくないレベルにはなれるはずですし、養成所に通った以上そうならないといけないでしょう。

 

半端な気持ちでプロになれるほど甘い世界ではありません。

芸人は厳しい世界だとは言いますが、それはどのような分野でも同じで、半端な軽い気持ちで目指そうとする腑抜けた人間が集まり、半端な覚悟だった自分が圧倒されてしまうだけなのではないでしょうか。

本気で取り組めば、売れるかはわかりませんが、他の芸人志望者を圧倒できるほどのネタは誰でも作れるはずです。

しかし、みんな少しなめていたり、やる気がなかったり、覚悟が足りなかったりするのです。

 

 

これはみんなと言いましたが、自分にも特に当てはまります。

私は大学生という安全地帯から芸人の世界に飛び込もうとした。

そもそもこれは間違いでした。

 

すべての人がそうだとは言いませんが、少なくとも私は甘かった。

 

自分は彼ら(養成所の同期)とは違って失敗しても、途中でやめても帰る場所がある。こんな気持ちが頭のどこかにあったのでしょう。

そんな腑抜けた人間が芸人になれるわけがありませんし、売れることなんてありえません。

 

結局私はコンビを組んでいた相方と解散し、年が明ける頃には養成所に行かなくなりました。

 

それでも養成所に通って芸人を目指していたという経験を存分に利用し、就活などでアピールしました。

このような珍しい経験は往往にして面接官の興味を引き、私はいくつかの企業から内定をいただきました。

実態は半年程度週一度カルチャースクール気分で新宿に出向いていただけの、何も実績も経験も積んでいない大学生なのに。

 

養成所に通っていたことですら、名乗るのがおこがましい。

芸人の卵ではなく、芸人の卵を目指していたにもかかわらず途中で投げ出したのが私です。

本気で芸人を目指している皆さんには同類として思われたくないはずです。

何かを目指すというのは、ただ思うだけではなく、実際の行動と熱意が伴っていなければなりません。

そして熱意の大きさは行動に比例します。

その行動には結果が相対的にどうかはわかりませんが、絶対値として見えてくるでしょう。

番組にどのくらい出たとかは自分だけの努力では決まりませんが、ネタを何本かいたとか、舞台にどのくらい出たとかは自分の行動で決まります。

ネタも舞台も数えるだけしか経験していなかった私の熱意というのは、やはりその程度のものだったのだと思います。

 

なんでもすぐに投げ出してしまうという自分の傾向はすでにこのころには明確に現れてしまいました。

売れなくても芸人という道を歩み続ける人はやはり人間として魅力的です。

フリーターとして数十年間生活を続けるという自分の未来に不安を感じてしまった時点で、私は覚悟が足りませんでした。

 

それでいて今でもテレビで芸人を見ているとうらやましく思ったり、解散した相方がネット番組に出ていたりすると、心の中が張り裂けそうになります。

 

今は社畜としてバイト程度の給料で生活していますが、長くは続かないでしょう。

こうなってくるとやはりあのときの選択について、思いはせてしまうわけです。

 

大学を中退しとけばよかった、とか芸人養成所をやめなければよかったとか。

最近だと別の内定先にいけばよかったとか。

 

こうやってあるはずもない別の選択肢について考えることは無駄でしかないとわかっているにもかかわらず、考えてしまう。

 

人間としての弱さや能力のなさを自覚しながら、養成所に通っていた頃のことを思い返しています。